農業政策の不正義を止めろ
そして実際、そうなりました。
会議の初日からEUの内部文書が漏洩して、輸出補助金の撤廃について最終宣言で一切言及しないという方針がすっぱ抜かれたのです。
4日目に交渉は決裂。
おもな膠着点は、もちろん農業補助金でした。
カンクン閉幕の忘れがたい光景は、発展途上国の絶望を象徴していました。
韓国の農業経営者中央連合会の前会長だったイ・ギョンへが、抗議の割腹自殺をしたのです。
韓国農民たちは、彼の死が「WTOが世界中の農民たちをいかに死に至らしめているかを見てのものだった」とする声明を出しました。
カンクンの抗議運動家たちは、米国とEUの農業政策が途上国に引き起こしている損失例には事欠かなかったのです。
そして、世界旅行ができるご身分のわれらが牛くんたちは、その焦点にありました。
牛への助成金と世界の貧民の所得との比較がEUを苛立たせたことは明白。
農業担当委員のフランツ・フィッシュラーは、この指摘に対して「不誠実かつ見当違い」と苛立たしげに切り返しました。
彼の反駁はさらに続きます。
「確かに、先進国ではさまざまなことに金を使っている。
しかしそれはわれわれが愚かだからではなく、生活水準が高いからだ。
次の批判はいったい何だ?
アフリカに援助金を送るかわりに政府が病院のベッドに、金のかかる防音壁に、公園のこぎれいな樹木に公金を使っていると批判するのか?
世界中いかなる社会にも、どんな公益やサービスが自分たちにとって重要か、選ぶ権利があるはずだ」。
わたしたちは、まさに選べるからこそ、賢くそうしなければなりません。
しかし、カンクンでの劇的な出来事が両者に歩み寄りの気運を高めるだろうとの見方もあります。
カンクンでは、途上国がWTOにおいて真に力を持てることが示され、多くの政府に自信をもたらしました。
しかし彼らがその力を生かそうとしなければ、先進国の農業政策の由々しき不正義は続くでしょう。