農家が減る理由
CAPは今日の欧州連合の、まさに中核をなすものです。
欧州共同体(EC)の前身だった欧州経済共同体(EEC)が1958年に発足したとき、戦後体制のなかで、手ごろな価格で食料を供給すること、そして農家にそれなりの生活水準をもたらすことが、重要課題と考えられていたからです。
1960年代初頭には、加盟6カ国で5人に1人が農民でした。
しか1998年には、15カ国に増えた加盟国で、農民は20人に1人にも満たないのです。
CAPは複雑で、時には非論理的であり、ますます政治的色彩を強めています。
『エコノミスト』誌はそれを、「豊かな先進諸国がこれまでに作りあげたなかでも、最もばかげた経済失政」と評しました。
著名なエコノミストのジェフリー・サッチは、かつてこのように語りました。
「どうしてもEUの農業政策を完全に理解することができない。
もしそんなことをしたら、あまりにも非現実的な世界に入りこんでしまい、そのトワイライト・ゾーンから二度と生還できなくなるだろうから」。
こんな複雑さもあって、CAPは安価な食料と高い賃金を保証する手段としては、非常に費用効率が悪くなりました。
政策予算は年に300億ポンドと、EUの総予算の約半分を占めています。
EUが加盟国を25ヶ国に拡げるにあたって、CAPの運営は重要課題となっています。
ポーランドやスロバキアのような国ではいまも農業が経済の中心で、彼らを助成金制度に加えるとEUの予算は破綻します。
もちろん、政府の負担は国民に転嫁されるでしょう。
本来は手の届く価格で食料を供給するはずだった政策は、いまや逆に、日々の買い物をずっと割高にしています。
経済協力開発機構(OECD)の試算によると、EU内の食品価格は、CAPがなかった場合に比べて44%も高いのです。
牛乳は70%、牛肉は221%、砂糖は94%の高値。
それでも英国では農業部門の世帯平均年収は下がっており、2002年には前年の2倍以上にのぼる5万2000人が離農しました。